生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
10本 なぁ、笑えよ……たとえ、――でも。
**
コンコン。
「奈々絵ー、入っていい?」
美弥香との通話を終えてから10分程が経った頃に、恵美はドアをノックしながら、そう声をかけてきた。
「ああ、いいよ」
俺がそういうと、恵美はドアを開けて、中に入ってきた。恵美はトレーを持っていて、その上には、お鍋とれんげと、湯のみと急須が置かれていた。
「少しは落ち着いた?」
トレーを俺の隣に置くと、それを間に挟んで俺の横に座って、恵美は心配そうに声をかけてきた。
「……ああ、そうだな」
「よかったー。お粥作ったから持ってきたの。食欲ないかもしれないけど、よかったら食べて。お茶もあるよ?」
お鍋をパカッと開けて、恵美は安心したように笑って言った。
すぐに、美味しそうな卵の匂いが俺の鼻腔をくすぐった。どうやら鍋の中にあるのは卵粥らしい。
湯のみの中では、薄緑色のお茶がゆらゆらと揺れていた。