生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
恵美に体を支えられながら、俺は一階のベランダに向かった。
途中でリビングにつくと、底の深いフライパンを持った純恋と出くわした。それから漂うじゃがいもなどの野菜の甘い香りから察するに、どうやら今日の空我たちのご飯はシチューらしい。
「奈々絵ーちょっと待ってて。純恋ご飯できたの?
お皿とコップ、あたしが用意しようか」
「……恵美、重いだろ」
お皿を四つとコップを四つ持った恵美の両手から、俺はコップだけを取った。
「え、でも」
「もう平気」
そう言うと、俺は恵美にまた肩を支えてもらって、今度は三人でベランダに向かった。
「二人ともご飯できたよー!!」
ベランダのテーブルにシチューの入ったフライパンを純恋が置くと、恵美はすぐにそう声を上げた。
――バシャッ!
恵美の声が耳に届くのと同時に、俺は水がはねたような音を聞いて、すぐさま海を眺めた。
「冷めてー!やったな潤!!」
そして、跳ねた音が聞こえた直後、随分楽しげな空我の声が聞こえた。
「うわっ、冷た!!」
空我に水をかけ返されて、潤は笑いながらそうぼやいていた。
ベランダから数メートル先の海で、空我と潤は、笑いながら水の掛け合いをしていた。それは、随分と楽しそうに。