生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
気がつけば、俺は涙を流していた。
もう、終わりなのか……?
――嫌だ。
今薬を恵美の目の前で飲んで、それが、喘息の薬じゃないってバレるのも。
仮にそれがバレなかったとしても、鎮痛剤に、喘息の薬に、合併症の薬。他にも、とにかくたくさんの種類の薬を、俺が持っているんだってバレるのも。
……何より、そんなことよりも、置いていかれるのが嫌だった。
まだ旅行三日目なのに。
もっともっと、空我の笑顔だって見たいのに。
それなのに俺は今にも倒れそうで、死にそうだなんて。
――みんなはこれから俺を置いて歳をとって、大人になっていく。
それなのに、俺は……。
俺はいつまで経っても、20歳にはなれない。――大人にはなれない。二度と。
「っう……」
悲しくて苦しくて、涙は滝のように零れた。
「奈々……?」
俺の涙をぬぐって、恵美は心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「やっ、嫌。……嫌だっ、………置いていかないでっ」
言ってすぐに後悔するも、時、既に遅し。
気がつけば、隠そうとしていた本音が、すすり泣くような甲高い声で、堰を切ったように溢れ出していた。
「奈々絵っ、大丈夫だよ、そばに―――」
俺の背中を優しく撫でて、労るようにそう囁いてくれた恵美の最期の言葉を聞き取ることもできずに、その日、俺の意識は途切れた。