生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
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「なぁ、姉さん、俺、あと1ヶ月で死ぬんだって。
こんなに早く死ぬんだったら、庇われた意味もないよな。やっぱり親戚達の言う通り、姉さんじゃなくて俺が死ぬべきだったのかな……」
【赤羽家之墓】とかかれた墓石を撫でながら、俺は言う。
ここは民間の墓地だ。何十もある墓の周りに花や木が埋められている、ごく普通の。
俺の家族の墓は、そこの奥にある。
「ごめん。こんなこと聞いても、姉さんが困るだけだよな……」
口角を上げて、俺は作り笑いをした。
「少なくともあたしは、そんな風に思ってないよ!!」
突如、後ろから俺を抱きしめて、恵美が叫んだ。
「あたしは、奈々絵が生きててよかったと思ってる」
「……お前だけよかったと思ってても、意味ねぇよ」
そう言い、俺は恵美の腕を振りほどいた。
「奈々絵……」
今にも泣きそうな顔をして、恵美が俺を見た。
「ごめん、恵美……」
俺は恵美から目を逸らして言う。
「――うっ!?」
その時、不意に頭痛と吐き気に襲われ、俺は頭を抱えた。
「奈々絵っ!?」
俺は急いでバッグから薬と水の入ったペットボトル
を取り出す。
薬を雑に出してからペットボトルのキャップを空けて、その中の水と一緒に薬を飲み込む。
「はぁ……」