生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
――ガラッ!!
「奈々っ!奈々絵、空我が……っ!!」
突然病室に入ってきた潤からその言葉を聞いた先の記憶は、無い。
気がつけば、俺は潤や恵美と一緒に、空我がいる病室にいた。
「空我さん、本っ当に、覚えてないんですか……?
みんなで花火もしたんですよ?」
「……っ、ごめんな、純恋」
空我は申し訳なさそうに顔を歪めて、目の前にいた純恋を見つめていた。
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「……彼は軽度の記憶障害だ」
俺達四人を別室に案内してから、すぐにアビラン先生はそう言った。
「記憶障害……?」
潤は頭を抱えて、先生の言葉を繰り返した。
「ああ、突発性のね。……彼は恐らく、君らといった旅行の全てを覚えていない。
そして恐らく、自分が海を嫌いだった理由すらも、彼は覚えていない」
――忘れてる?
空我が、あの俺の人生をかけた旅行の日々を……?
「……っ、嘘だろ」
苦虫を噛み潰したような顔をして、潤は言った。
先生が紡いだその言葉は、まるで、胸をナイフで貫かれたかのような鋭さを放っていた。