生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。

先生と一緒に、恵美達より一足先に別室を出て、自分の病室に戻ってきた俺は、そこのドアにもたれかかって、頭を抱えた。

「……君のせいだ、赤羽くん。


病気は、あることがきっかけとなって、進行が急速に進むことがよくあるんだよ。……空我の記憶障害は、突発性なんかじゃない。……君が空我に、秘密を暴露してしまったから。空我は君が死ぬと知って、精神的ショックを受けたのがきっかけで、虐待のストレスが爆発して、脳に支障をきたしてしまったんだ」

顔を伏せて、先生は言った。


「嘘……だろ……っ」


先生の言葉を確かめるように、俺はそう言った。

……俺のせいなのか?
俺はただ、空我が笑顔になればなんでもよかっただけなのに。

空我はこれからも、どんどん俺達と遊んだことを忘れてくのか?

――俺のせいで?

「――これが君のやりたかったことか?」

「違うっ!!」

俺は病室のドアを思いっきり叩いて、我も忘れて叫んだ。

「俺はただ空我が笑顔になれば、それで……っ」

「嘘をついてる限りは、誰かを笑顔にすることも、幸せにすることもできないよ。……絶対にね」

困惑した俺の顔を見て、先生は言った。

「じゃあ、今までのは、全部……」

“―――――”

頭によぎったその言葉は、掠れて声にならなかった。

……無駄だったのか?

あの旅行は、何もかも。

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