生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
17本 ――生きて、生きて、幸せになって。
家族の葬式の日、叔父に暴力を奮われ、叔母に暴言を吐かれていた俺を見て見ぬふりしていた奴が、そこにはいた。
「奈々絵、これやるよ。――紫苑からだ」
爽月さんはそう言って、後ろ手に隠していた25本の花梨の花を包んだ花束を、俺に差し出してきた。
花梨の花を包む包装紙には、表に、“奈々絵へ”と書かれた手紙がクリップで留められていた。
「姉ちゃんが……っ!?」
俺は慌てて花束を受け取って、手紙を開いた。
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奈々絵へ
あなたがこの手紙を読んでいる時、きっと私は、あなたのそばにはいないでしょう。
私が奈々絵から離れるなんてことは絶対にないと思うけれど、万が一のことを思って、私はこの手紙を書くことに決めました。
ごめんね。奈々絵には私がいなきゃダメなのに、勝手にいなくなってしまって、本当にごめんなさい。
俺の瞳から、音もなく涙がこぼれ落ちた。
――ああ、本当に勝手だよ、姉ちゃんは。こんなものを残して、勝手にいなくなるなんて……っ。
俺は、なにかに鷲掴みされたみたいに胸が痛かった。
でもね、一つだけ言わせて?私は奈々絵を守りたかった。奈々絵を守るためなら、なんでもするつもりだったんだよ?
――だって奈々絵は、なにがあっても、私の自慢の弟だから。