生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。

――バチーン!!

「……っ」

俺は叩かれた頬を抑えて、目線だけを恵美に向けた。

「はぁ。……やっと、こっち向いた」

ため息を吐いて、恵美は言った。

「なっ……!?
痛っ!」

恵美はポケットからティッシュをとりだすと、俺の唇が切れて流れた血を、それで拭った。


「……相っ変わらず、嘘つくの下手だね、奈々絵。奈々絵って嘘ついてる時、目を合わせないんだよ?知ってた?」

自信満々に、恵美は言った。

確かに、旅行中に嘘をついてた時も、目を逸らしていたことが多かった気がした。何も決して全てではないと思うが。


「……はぁっ、興味ない」


今度は恵美から目をそらさないで、俺はまた嘘をついた。

「……ムカつく」

「え……?」


「ムカつくんだよ、そういうの。一丁前に、俺のことなんでもわかってるみたいに言いやがって……」

髪を片手でクシャッといじって、俺は不機嫌な態度を現すかのように言った。

――喘息が悪化してることも、そのせいで俺が合併症にかかったってことも、ろくに見抜けなかったくせに。


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