生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
「空我っ!!」
台所を抜けて、玄関の前まで早足で歩いた俺の肩を、潤は掴んだ。
「……放せっ!」
「お前、泣いてんのか……ッ!?」
後ろから俺の様子を伺って、潤は困惑した様子で言った。
「……なんっ、何でっ!!何で母さんや父さんみたいに、奈々絵までいなくなってんのっ!?ねぇ何で!!」
潤の胸板を叩いて、俺は我も忘れて叫んだ。気がつけば、潤に言われたとおり、両目から大粒の涙が零れ落ちていた。
家に帰って、中に誰もいないと、嫌でも不安になる。――俺は本当に母さんに愛されてるのかって。母さんも父さんも医者なんだから、忙しくて帰ってこないのは当たり前なんだ。
でも、もし仕事が終わってるのに敢えて帰ってこないことがあるとしたら、それは、俺に会いたくないからじゃないのか?
ただただ怖いんだ。両親が今日家に帰って来るのかどうかを知るのも、奈々絵がいない世界で生きてくのも。
「……空我、大丈夫だよ。何があっても、俺は離れないから」
俺の背中をさすりながら、潤はもう片方の手で俺の頭を撫でて、優しく言った。