生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
そこには、俺が忘れた記憶の全てが、奈々絵の日記として書かれていた。
「可笑しいよな。ネガディブな言葉が、生きた意味見つけたいってのと、体調を崩して食欲がなかったってのしかないんだ。……本当は、もっと辛かったはずなのに」
悲しそうに顔を伏せて、美弥香はゆっくりと、噛み締めるように言葉を紡いだ。
美弥香の言うとおり、日記には、辛いなんて言葉も、苦しいなんて言葉も、何一つ書かれていなかった。
奈々絵は自分にはもう時間が無いことに、とっくに気づいてたハズなのに。
1ヶ月もしないで死ぬ羽目になることまで知ってたのかはわからないが、寿命が短いことくらい、とっくの党に分かってたハズなのに。
それなのになんで、どうして……っ。
どうして楽しかったとか嬉しかったとか、あるいは恵美が可愛かっただとか、そんな当たり障りないことしか書いてないんだろう。
もっと苦しいとか辛いとか書いてあってもいいハズなのに。