生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
「……なんだ帰ってたのか。お帰り」
そう言った親友の名は、緋扇美弥香(ヒオウギミヤカ)。美弥香は、外ハネした茶色い髪に、垂れ下がった瞳という人懐っこい猫のマンチカン種のような容姿をしている。
「ああ、ただいま」
そんな美弥佳は、俺の小学校自体からの親友で、空我と潤以上に仲の良い間柄だ。
家族が息を引き取って塞ぎ込んだ俺を、親戚は誰一人として引き取ろうとしてくれなかった。
それで俺は、家族が死んだことに同情してくれる他人の家に居候し、暮らしが辛くなったら捨てられるというのを転々と繰り返していた。
美弥香の両親は、そんな俺を危惧して身元引受人になると言い出してくれて、あまつさえ寄る辺のなかった俺をこの家に一緒に住まわせてくれた。
そのため、美弥佳と、俺の身元引受人の美弥佳の両親は、俺の病態の全てを知っている。
本当に、つくづく美弥佳とその両親に俺はよくしてもらっていると思う。
美弥香は親友だが、それ以上に俺の恩人だ。
「ん。……さっさと部屋入れば?」
俺と相部屋になってたさっきの部屋のドアを開けて、
美弥香は言う。
「美弥佳、俺、ずっと生きた意味を見つけて悔いなく死ねるようになりたいって思ってたんだけどさ、……明日から、空我達とそれを探す旅に出ようと思う」
俺は慌てて、美弥香に続いて部屋の中に入った。
「そっか……」
閉めたドアによっかかって俺が言うと、美弥香は目を見開いた後、目じりを下げて、悲しそうに笑った。