生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
「……奈々、起きろ」
海に着いた頃、俺は肩を揺さぶり、奈々絵を起こした。
「んっ、空我?……はよ」
「……おはよう」
朧気な瞳をして、小さな声で挨拶してきた奈々絵を一瞥した後、俺は挨拶を返した。
「……しっかし、本当によくここまで来たよなぁー。海行くの楽しみだよ!!」
別荘に着いたところで車から降りると、俺はわざとらしく声を上げて、元気よく振舞った。そうすれば、いつものように、また元気になれると思ったから。
でも、全然元気になれなかった。早くいつもの調子に戻らないと、奈々絵達に空元気なのがバレてしまうというのに。