生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
「えっ」
「……空我、お前今朝から元気なかっただろ?」
俺が戸惑いの声を漏らすと、奈々絵は俺の肩を叩いて、笑った。
「……別にそんなことない。そんなことよりほら、ベランダから海がよく見えそうだし、早く中入ろうぜ!!」
図星でバツが悪くなった俺は、奈々絵から目を逸らすと、すぐに元気よく部屋の中に入った。
ベットが三つ並んだ先には、透明なガラスの丸いテーブルが置かれ、その左側には茶色いソファが置かれていた。ソファの反対側には、それと同じ色をした椅子が置かれていた。
荷物を床に置き、奥にあった窓を開けてベランダに入ると、風で髪が揺れた。
海が近くにある別荘だから、ベランダからは、空色の海がしっかりと一望できた。海は、風を受けてゆっくりと波が流れていた。
「んー、綺麗だな。奈々絵と潤も来いよー!」
俺はそう言って、玄関にいた二人を、大きな声で呼んだ。
空元気だなんて、気づかないで欲しかった。
本当は俺に元気がないのなんて、気のせいだと思って欲しかったんだ。