生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
葬式が始まる五分前には俺は傷だらけで、長時間立つのも一苦労なほどボロボロになっていた。
――そうしたのが親戚だってんだから、本当に自分はどれだけ愛されていなかったのか。きっと姉は、俺の分もたくさん愛情を貰って生きていたんだろう。
遺体の前に映っていた姉は、笑顔だった。集合写真を、姉の部分だけ切り取ったような写真。その写真に見覚えがなかった俺は、バックに入っていた姉の肩身のカメラを起動して、フォルダを確認した。そこに映っていたのは、ほとんどが様々な友達と笑ってる姉の姿だった。
――そして、数枚だけ美弥香と二人で映る俺の姿も入っていた。
――その時、俺はパズルのピースが繋がった気がした。恐らく、姉は慕われていて、沢山の友達がいた。対して、俺の友達は美弥香1人だった。きっとそれが、姉が優秀で、俺が出来損ないだと言われる所以だ。――俺が出来損ないでなかったのは、学力だけだった。――単純な話だ。姉は多くの人に慕われていて、俺は逆に、多くの人に慕われていなかった。友達どころか、親戚や従兄弟ですらも、俺を慕ってはいなかった。
きっと、死んだ時に姉が言った言葉も、何処かの海で姉が言った言葉も。全部、愛されてなかった俺に向けての言葉だった。
――姉は俺が、幸福になるように願ってたんだ。俺にはそう願われる価値もないのに。
――ごめんなさい。
俺が生き残らないで、姉が生きるべきだったんだ。
叔父さん達が言っているように。
姉はきっと、自分が死んだらそれを痛感してしまうからそれで俺が自殺しないように、死に際にあんな言葉を言ったんだ。