生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
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空我の頬を、一筋の涙が伝った。
「……ごめん。好き勝手言ってごめん。そんなこと話させてごめん。……俺、今朝母親の夢見て、頭ん中それでいっぱいいっぱいで。……母親のこと考えんのやめて旅行楽しもうって思ってたんだけど、全然できなくて……っ」
楽しもうと思っても楽しめなかったから見栄を貼ったことを、空我は泣きながら吐露した。
「――ああ。分かってる、もういいよ。
一体、どんな夢見たんだ?」
空我の頭を撫でて、俺はそう言った。
「――母親に、海で殺されかける夢。それ、……夢は夢でも、昔実際に起きたことなんだ。
――10年前に海で殺されかけたあの日から、俺の虐待は始まったんだ」
顔を俯かせて、弱々しい声を発して空我は言った。