生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
【空我side】
海の前に置かれたベンチに座っていた俺は、名前を呼ばれて、顔を上げた。
「空我、帰るわよ」
そう言って、母さんは片手で俺の手首を掴んだ。
「はぁ……」
わざとらしくため息を吐くと、母さんはもう片方の手に持っていたコーンポタージュの缶を開けて、中身を俺の腕にぶっかけてきた。
「熱っ⁉ やめて、母さん、熱い!!」
「黙りなさいよ」
悲鳴を出すかのように俺が叫ぶと、腕に何の躊躇もなくコーンポタージュを掛け続けながら、母さんはさらに、俺の足をスニーカーごとハイヒールで踏みつぶした。
「痛っ!?」
「今は夜なんだから、うるさくすると近所迷惑でしょ。そんなこともわからないの?」
‘‘お前が俺が騒ぐ原因をつくってんじゃねえか”と、叫びたくなった。
でも、口には出さなかった。
そういったら、もっと惨いことをするとわかりきっていたから。