生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
「……そう、だな」
片手の拳を握りしめて、俺は今にも叫びだしそうな自分の心に鞭打って、そう頷いた。
確かに、俺が元気がないと気づいたのは、空我が泣いてたからだ。
でも、俺が泣いてることにすぐに気づいたのは、車の時隣にいたからとか、空我が涙を隠せていなかったからとか、そんな在り来りな理由ではない。
大方恵美はそんな理由で気づいたんだと思うけど、俺が気づいた理由は、それとは全く別物だ。
――空我が、本当は俺が合併症にかかっていることに勘づいてしまったのかと思ったから、俺は早く気づいた。
合併症のことは、俺以外には、美弥香とその家族と先生くらいしか知らないのだから、空我が勘づくハズもないのに。
――旅行中はずっと隠さないといけない。そう思うと、何処かでボロが出て、そのうち隠し通せなくなるのではないかと。そのうち、何もかもバレるのではないかと思ってしまう。
――俺はこの一週間、本当に隠し通すことが出来るのだろうか。
合併症にかかっていることも、この旅行に来たのが、生きた意味を見つけて、悔いなく死ねるようになるためだってことも、ずっと隠していられるのだろうか。