生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
通話を終えたあたしは、朝ご飯を食べて身支度を済ませると、すぐに駅前の総合病院に向かった。
病院に着くと、あたしは一目散に図書室に向かった。
図書室のドアを開けて中に入った瞬間、昔ながら紙の匂いが、鼻腔をくすぐった。
幾重にも並んだ本棚の列を通り過ぎながら、あたしは彼を探した。
――いた。
赤紫色のような、艶やかなワインレッド色のツヤのある髪に、ほんの少し垂れた二重の瞳。それにあたかも女の子のようにながくて、鮮やかにカールしたマツゲと、陶器のように白い肌。
……本当に、彼程容姿の整った人は中々いないと思う。
第二ボタンまで開けて着崩した白に青のチェック模様が入ったカッターシャツに、黒いスキニーを履いて、彼は、部屋の一番奥の本棚の前に立って、アルバムを立ち読みしていた。
とても熱心に読んでいるみたいで、彼はあたしがもう既に近くにいることなど、全く気づいていないようだった。
――赤羽奈々絵(アカバナナエ)、それが彼の名前だ。
中学一年生の二月に双子の兄の紹介で出会ってから、もう彼とは既に四年以上の付き合いになる。
出会って一週間後、あたしは奈々絵に告られて、交際を始めた。
高校一年生の三月末の今でも、奈々絵はあたしの大事な彼氏だ。