生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
ベランダに続く階段を上がると、俺は靴を脱いで、別荘に戻った。
「うっ、痛……」
猛烈な胸痛に襲われて、俺はすぐに床に座り込んだ。
恵美達に勘づかれないよう、座ったまま後ろに振り向いて、俺は慌ててカーテンを閉めた。
「っ、はぁっ、はぁっ……」
――息が吸えない。
脈拍が早くなって、ろくに呼吸ができない。
「っう……っ!はぁっ、はあっ、はぁ……」
胸が引き裂かれるかのような猛烈な痛みに襲われて、呼吸も、さらに困難を極めた。
生きてる心地がしなくて、“このまま死ぬんじゃないか”って恐怖心が、俺の脈拍を速らせた。
自己憐憫と不快感が猛烈に押し寄せて、頭が真っ白になる。
「うぁ……っ、痛っ」
窓に手をつけてどうにか立ち上がると、俺は壁伝いに歩いて、台所に置かれていた薬のポーチをとった。その中から薬を取り出すと、コップに水を入れて、薬を口の中に流し込んだ。
「ゲポッ!? うっ……ゲホっ、ゲホっ!!」
薬を飲み込むと、口の中で痰が絡んで、俺は波に襲われたみたいに、怒涛のように咳き込んだ。薄桃色に染まった痰が、口の中から、堰を切ったように一気に溢れ出した。