生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
痛みがある程度マシになると、俺は涙を拭って、ベランダの前まで歩いた。
――プルルルル。
窓に背中をくっつけて、空我達を見ながら、俺は美弥香に電話を掛けた。
「あ、美弥香?」
「……ん、どうした?何かあったのか?」
優しい、俺を気遣うような親友の声を聞くと、スーッと気が抜けて、再び涙が溢れだした。それはまるで、張り詰めていた糸が一気に切れたかのようだった。
「今朝、空我が泣いてたよ。正直、病気のことバレてんのかと思ってヒヤッとした。そんなわけないのにな……」
そう言って、俺は困ったように笑いながら、涙を服の袖で拭った。
真後ろを見れば、空我達が笑いながら花火をする姿がよく見えた。
“花火は煙の避けようもないからな”なんて、そんなん嘘だった。
本当は、花火どころか、バーベキューすらも。それどころか、俺は火を使うことの全般を先生に禁止されていた。それでもやったのは、俺のただのわがままだ。
――今やらないと、二度とできない気がしたから。あるいは、生きた意味を見つける手がかりになればいいと思ったから。そのためだけに、俺は後幾ばくもない余命を縮めて、バーベキューを楽しんだ。
自業自得のように発作で苦しむハメになった自分を見ると、ますます惨めさが募った。
「奈々絵……」
囁くように、美弥香は呼んだ。
「美弥香、俺……っ」
「――大丈夫だよ、奈々絵。お前なら、隠し通せる」