生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
「奈々絵、どうかした?」
「……いや、何でもない」
不自然に反応した俺を見て、恵美は不思議そうに首を傾げた。その様子から、少なくとも胸痛が始まった時からは見てなかったことが分かって、俺は心底ホッとした。
バレないように、そっと音を立てずにポケットからハンカチを取り出して、コップの周りに置いた。
「そ?空我、水族館に行きたいんだって。支度しよ?」
「あっ、……ああ。そうだな」
頷きながら、俺はハンカチを持った手を、ゆっくりと動かした。零れた水をハンカチで拭き取って、証拠を湮滅すると、コップを台所に戻して、俺は寝室に戻った。
着替えなどの一通りの用意を済ませた俺は、最後に、ダイニングにあった冷蔵庫から水の入ったペットボトルを一つ取り出した。それを、既に薬のポーチを入れておいたバックに入れて、俺は空我達と別荘を出て、水族館に向かった。