焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
そうだよね……どうでもいい相手だったら、こんなに想い悩むことはないはず。

門脇部長は珈琲を一気に飲み干して、空になった缶を手に立ち上がった。

「最後にもうひとつ。自分の気持ちをさっきみたいに思うがまま相手に伝えて、初めてわかる気持ちも俺はあると思うぞ? ……ひとりで悩んでいたって、答えが出ないこともあるってことも頭の隅に入れて、今後は仕事に身を入れるように」

「……はい、本当に申し訳ありませんでした」

私も立ち上がり深々と頭を下げた。

すると門脇部長は「もう少し休んでから戻れ」と言いながら私の肩をポンと叩き、先にオフィスへと戻っていった。

「伝えて、初めてわかる気持ち……か」

彼の背中を見送りながらポツリと漏れた声。

そのまま力が抜けたように、椅子に腰かけた。そして門脇部長に買ってもらった缶珈琲をボーっと眺めてしまう。

門脇部長の言葉が、ずっと心に残っている。それはやっぱり、彼の言う通り私は、もう既に織田くんに恋心を抱いているからだろうか。
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