焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
“おやすみ”と言われ、“おやすみ”と返した。だったらすぐに電話を切ればいいのに、なかなか自分から切ることができずにいた。

だけどなぜかいつまで経っても通話が切れた音が聞こえてこない。すると電話越しから困った声が聞こえてきた。

『滝本、早く電話切ってよ。俺からは切りたくないから』

「……っ」

嘘、やだ。……もしかして織田くんも私と同じ気持ちなの?

すると彼は電話越しにクスリと笑う。

『聞いてる? 滝本』

「ごめん! 切るね、おやすみ!」

『うん、おやすみ』

耳に残る優しい声色に身体中を熱くさせて通話を切った。その瞬間、スマホを握りしめたまま、ソファに倒れ込んだ。

「もう、織田くん……私のことをドキドキさせすぎ」

たった数分しか話していないのに、二ヵ月以上会えなかった寂しさが満たされていく。

もう一度スマホをタップし、これまでに彼から送られてきた写真を眺めた。

やっぱり私、織田くんのことが好きなのかもしれない。声を聞いただけで今、胸がいっぱいで幸せな気持ちになれているのだから。
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