焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
本当に陸人はなにを言っているのだろうか。今さら話すことなんてないはず。でもここで突っぱねても、良いことはない気がする。

もしかしたら昔、自分がしたことを悪いと思っているのかもしれない。陸人は陸人で、後悔していたのかもしれないし……。

そう思うと無下にはできない。それでも昔のことがある手前、素っ気ない態度になってしまう。

「なに? 手短にお願い」

彼を見ることなく言うと、陸人はそっと私の隣に並んで立った。その瞬間、つい隣の彼を見ると重なり合う視線。

すると彼は唇をギュッと噛みしめた。

「杏……今さらだけど、付き合っている時浮気をして悪かった」

そう言うと急に頭を下げ出した彼に戸惑う。

「ちょっと陸人、やめてこんなところで」

道行く人は何事かと見てきて、居たたまれなくなる。それに本当に今さらだよ。もう別れて何年経っていると思っているの?

声を掛けると彼はゆっくりと顔を上げた。

「ごめん。俺、杏と別れたことをずっと後悔していたんだ」

「えっ……?」

陸人は訴えるように言う。
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