焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
「ごめん、私人を待っているから先にお店に入ってて」

きっとそろそろ織田くんが到着する頃だよね。スマホで時間を確認しようとした時、その腕を掴まれた。

「――え」

私の腕を掴んだのは陸人で、怖いほど真剣な瞳で私を射貫く。

「陸人……?」

やんわり掴まれている腕を離そうとしたものの、さらに強い力で掴まれた。

「やっぱり俺、杏のこと諦められないよ」

「なに言って……」

「会って話をして、改めて杏のことが忘れられなかったんだって再認識させられた。俺、杏じゃないとだめなんだ」

私の声を遮り、また陸人は勝手な言い分を続ける。

「ちょっと陸人、離して」

歩道には何人か人が行き交っているのに、グイグイ迫ってくる彼が怖くて声が出せない。

すると陸人は周囲から私を隠すように前に立つ。

「きっと杏も俺以外の奴と付き合っても、後悔するよ。俺の方がよかったって。そうなる前にもう一度俺とやり直そう。……いや、今度は結婚を前提に付き合おう」

勝手に暴走する陸人に嫌悪感を露わにする。けれど彼は一向に私の腕を離してくれない。
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