焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
「無理。だってこんな機会、滅多にないだろ? またしばらく会えなくなるし、しっかり滝本が料理する姿を目に焼き付けていかないと」

それを言われると、これ以上なにも言えなくなる。

「わかったよ。でも邪魔はしないでね?」

「了解」

織田くんは透明人間と言い聞かせて、早速料理に取りかかった。

でもそっか。最近ずっと陸地勤務だったから、毎日電話やメッセージでやり取りしたり、こうして会うこともできるけれど、もう少ししたらまた海へ向かうんだよね。

それも一日二日じゃない。長い期間ずっと。

連絡もとれず、ただ待つ日々がまた始まるのかと思うと寂しくなる。そしてこうして一緒にいられる時間を無駄にしちゃいけないとも。

野菜を切りながら、織田くんに思いつくまま話し掛けた。

「そういえば織田くんは普段、食事はどうしているの? 住んでいる場所は?」

些細なことだけど、ずっと知らずにいたことを聞くと彼はすぐに答えてくれた。
< 169 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop