焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
織田くんが、再会した日に言っていた言葉が脳裏に浮かんだ。

『会いたい人にはなかなか会えないし、目を見て話しをすることもままならない。……この仕事に就いて改めて思い知らされたんだ。伝えたいことは伝えたいと思ったその時に言わないとだめだって』

その言葉の意味が、今やっとすべて理解できた気がする。

その後も彼は最後まで私が料理する姿を見ていて、出来上がったシチューとサラダを美味しそうに食べてくれた。

「ごちそうさま。本当に美味しかった。片づけは俺がやるよ」

そう言うと彼は空になった食器を手に立ち上がった。

「え、いいよ」

私も慌てて食器を手に立ち上がり、彼の後を追ってキッチンへ向かう。

「じゃあふたりでやろう。その方が早いだろ?」

「……うん」

比べたらいけないとわかっているけれど、どうしても陸人と比べてしまう。

陸人にも何度か手料理を振る舞ったことがある。でも陸人は、なにも手伝ってはくれなかった。

当時は彼のために色々なことができるのが、“彼女”としての特権でそれが嬉しくてたまらなかったけど、本当に幸せなのはこっちなのかも。
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