焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
「おう、お疲れ。だいぶ商談長引いたな」

「お疲れ様です。はい、手こずりました。門脇部長はまだ帰られないんですか?」

帰り支度を進めながら尋ねると、彼は心底うんざり顔で椅子の背もたれに寄りかかった。

「あぁ。クソ社長に面倒な仕事を頼まれてな。お前は早く帰って休め」

「ありがとうございます。お疲れ様です」

先に帰るのは気が引けるけれど、私が残ったところで手伝えることなんてない。だったら邪魔にならないよう、早く退散するのみ。

挨拶をしてオフィスを後にした。

人気(ひとけ)がなく、薄暗い廊下を進んでエレベーターで一階へと降りる。

今日はみどり、遅くなるって言っていたよね。なにか美味しいものを作って待っていてあげよう。でも時間が時間だし、軽く食べられるものがいいかな。

今晩の献立を考えながら玄関を抜けようとした時、ふと会社前で待つある人物の姿が視界に入り、慌てて引き返した。

そして相手に気づかれないようそっと身を潜めながら再度確認する。

「……やっぱり陸人だ」
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