焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
特に危害を加えられたわけではないし、なによりいくら別れたからと言っても陸人のことを警察に突き出すこと、できるならしたくない。もう少し時間が経てば、諦めて帰ってくれるだろうか。

そっと廊下の窓から下を見るものの姿が見えない。

「あれ、滝本? お前帰ったはずじゃ……」

突如声を掛けられ、肩が震える。バッと振り返ると視線の先にいたのは、私の反応に驚いている門脇部長だった。

「門脇部長……。もう、びっくりさせないでくださいよ」

心臓が尋常じゃないほど、バクバクいっている。

一瞬、あり得ないけど陸人だと思っちゃったじゃない。

身体中の力が抜け、その場に座り込んでしまう。

「あ、おい滝本!?」

すぐに駆け寄ってきてくれた彼は、立ち上がるのを手助けしてくれた。

「すみません」

「いや、俺も驚かせて悪かった。……だけどさっきの驚き方は尋常じゃなかったぞ? なにかあったのか?」

心配そうに私の顔を覗き込む門脇部長。

どうしよう、相談してみる? 迷惑じゃない? ――でも私ひとりではどうしたらいいか……。
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