焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
だけど退社時間、陸人の姿を見る日と見ない日があった。いつも先に門脇部長が玄関付近を確認してくれて、陸人がいるかいないか見てくれるけれど、次第に諦めたのか陸人の姿は見えなくなった。


「もういい加減、諦めたのかもな」

「はい、私もそう思います」

織田くんと会えなくなって三ヵ月が過ぎようとしていた。季節はすっかり冬を迎えている。

この日は夕方からはじまった会議が伸びて、終わったのが二十時前。残りの仕事を片づけていつものように門脇部長と会社を後にした。

肩を並べて駅へ向かう中、話題は決まって陸人のことになる。

「この一週間、全然見かけないしな。でもまだ用心した方がいい。大丈夫と言うが、彼氏が戻ってくるまでは俺もつくし、お前もまだ友達の家にいた方がいい」

「はい。ありがとうございます」

みどりからこの前羽山くんが陸人と会い、話をしてくれたと聞いた。陸人も羽山くんの話に耳を傾け、わかったと言っていたと。

だからきっと、もう陸人が私に会いにくることはないと思う。でも門脇部長もみどりも、織田くんが戻ってくるまではダメと言う。
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