焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
嘘、どうして陸人がここに? 羽山くんと話しをして、わかってくれたんじゃないの? それに私の家を知らないはず。それなのにどうして……? もしかして会社を出てから、ずっとつけられていた?

たくさんの疑問が駆け巡っていく。

だけどすぐに我に返った。考えている場合じゃない、逃げないとって。

急いで起き上がろうとしたものの、すぐに両手を掴まれ押し倒されてしまった。

「いやっ、やめて……!」

声を上げると、掴まれていた両手は頭上でひとつにまとめられ、もうひとつの手で口を塞がれる。

「んー……!!」

どうしよう、怖い。なんで私、陸人につけられていたことに気づかなかったんだろう。

強い力で押さえつけられ、動くことができない。怖くて涙が零れ落ちた瞬間、ずっと口を閉ざしていた陸人は悲痛な声を上げた。

「杏がいけないんだ。……会いたいと言ったのに会ってくれないから」

それは何度も伝えたじゃない。私はもう陸人と会うつもりはないって。それなのに陸人は、どうしてわかってくれないの?

だけど口を塞がれた今、伝えることができない。

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