焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
だけどきっと、こんなにも美味しく感じるのは織田くんとふたりで作って、ふたりで食べているからだと思う。

だけど幸せな時間は長く続かない。今夜は織田くん寮に戻らないといけないから。

後片付けもふたりで行ない、ソファに並んで座ってテレビを見ている間、ずっと彼は私のそばにピタリと寄り添ってくれていた。

「ごめん、そろそろ行こうか。送ってく」

「……うん」

とうとう訪れてしまった別れの時間。

身支度を整えて織田くんと手を繋ぎ、玄関へ向かうものの……。暗い玄関を見て昨夜の記憶が蘇り足が止まる。

「滝本?」

心配そうに私を見る彼に慌てて笑顔を取り繕う。

「あ、ごめん。行こうか」

すぐに玄関まで続く廊下の電気を点け、自分を落ち着かせる。すると織田くんは、私の肩に腕を回しそっと抱き寄せた。

「大丈夫だよ、もう」

「大丈夫」と繰り返し、私の髪を撫でる。

うん……そうだよね、もう大丈夫だよね。織田くんと羽山くんが陸人に話してくれて、彼も謝ってくれたのだから。
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