焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
「あと少しだから頑張って」

そう言って差し出されたのは彼の大きな手。

「――え」

思わず足を止めて、織田くんと差し出された手を交互に見つめてしまう。

えっと……私を心配して手を差し出してくれたんだよね? いや、でもいいのかな? だってそれはつまり、手を繋ぐってことになるでしょ? だけど織田くんは息が上がっている私を気遣ってくれているわけで、ここで握らないのは失礼?

グルグルと考え込んでいると、織田くんは強引に私の手を握った。

「ほら、急ごう」

「あっ……!」

力強く握られた手を引き、彼はスピードを速めていく。

織田くんの引く力が強いから、さっきまでしんどかったのが嘘のようにすいすい足が進んだ。

助かったけど……握られた手が熱い。どうしよう、手汗掻いてない? 不安になる。

とにかくいっぱいいっぱいの私の手を引いて織田くんが向かった先は、高台の上にある公園だった。

だけどそろそろ日が沈む時間。辺りはシンと静まり返っていて私たち以外、人の気配を感じない。
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