焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
デートしたことを覚えておいてって言ったけれど、え!? それでどうしてキスするの!?

織田くんは混乱する私からゆっくり離れると、白い歯を覗かせた。

「キスしてごめん。でも、こうでもしないと、滝本に男として意識してもらえないと思って。……少しは忘れられない一日になった?」

「……っ! なりすぎだよ」

投げやりに言うと、彼は満足げに「それはよかった」と言いながら笑った。

不意打ちにキスするなんてズルイ。でも嫌じゃなかった。恥ずかしさでいっぱいなだけ。

普通、嫌いな相手にキスされたら嫌だよね? それなのに嫌じゃなかったのは……私の中で織田くんの存在が大きくなっているから?

織田くんが言ってくれたように、たった一日一緒に過ごしただけで私も彼のことをたくさん知ることができた。

そしてますます素敵な人だなって思えて……。でもこれが恋心と言えるのだろうか?

「帰ろうか。……送るよ」

そう言うと差し出された手。

帰りは下りだし、手を繋ぐ必要なんてないのにな。

「……うん」

素直に私は彼の手を取ってしまった。
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