僕に君の愛のカケラをください
お迎え
翌朝7時、約束通り、葉月は蒼真のマンションにやって来た。

数日分の着替えと身の回り品を入れたスーツケース2個と食材の入ったビニール袋をぶら下げて。

「蒼真さん、今日からよろしくお願いします!」

空手で男子と組み合ったり、農業大学校で年上の男子大学生と寝泊まりをしてきた葉月は、蒼真との同居に抵抗がない。

善意からの申し出である蒼真との同居もその延長だと思っている節がある。

「蒼真さん、朝ごはんまだですよね?自宅の冷蔵庫から食材を持ってきましたから、早速準備しますね。台所お借りしてもいいですか?」

料理をしない蒼真のマンションには、料理道具がほとんどない。鍋とフライパンが一つずつ。後は電気ポットと電子レンジがあるだけだ。

その事を伝えようとした蒼真の目の前で、葉月はスーツケースからエプロン、包丁、まな板などを取り出した。

そして、調理に取りかかると、ササッとスクランブルエッグとクラブサンド、サラダを作り上げ、コーヒーと一緒にテーブルに並べた。

「私の家は父子家庭で、幼いときから私が家事担当だったんです。味は保証しますよ?」

そう言って笑った葉月の言葉は、蒼真の心を掴むのに十分な威力があった。

< 19 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop