僕に君の愛のカケラをください
K&Sに着くと、靖晃をはじめ他のスタッフが全員出勤していた。

「葉月ちゃん、聞いたよ。どうして僕に相談してくれなかったの?水臭いなー」

靖晃は葉月を見つけると嬉しそうに駆け寄って来た。そして、全員が一ヶ所に集まり、毎朝恒例の朝礼が始まった。

葉月以外は、K&S設立時からのオリジナルメンバーだ。ほとんどが靖晃と蒼真の友人。そのためとても仲が良い。

靖晃から、葉月が会社の裏の公園で子犬を見つけたこと、そのうちの一匹であるジロウを引き取ろうとしている経緯について説明があった。

引き取るにしても、生後40日までの子犬は2~4時間毎の授乳離乳食、排泄の世話が必要なため、会社側としては妥協案としてペット同伴での勤務の許可を検討していること、そのためにはスタッフの理解と協力が必要である、と靖晃は説明した。

「僕はK&Sを社員に優しい会社にしたいと思っている。育児や介護、家族に関することなど、問題が生じたらみんなで解決していきたい」

横に立つ蒼真も無言で頷いた。

「いいんじゃない?子犬だったら噛まないし、寝ていることが多いでしょ?」

「葉月ちゃんが出掛けるときは会社に残っている誰かが代わりに看ておくこともできるし、テストケースとしてやってみてもいいんじゃない?」

靖晃と蒼真の友達ばかりなだけあって、みな理解がある。

葉月は涙ぐみながら

「色々とご配慮頂きありがとうございます。皆さんにご迷惑をお掛けしないように気を付けますのでよろしくお願いします」

と頭を下げた。
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