僕に君の愛のカケラをください
食事を終えた葉月は、台所で洗い物をしたり、掃除、洗濯と忙しく動いていた。

蒼真は、昨日のウェブ会議の会議録を作成するために、リビングでパソコンを使っている。

いつもは寝室のデスクトップパソコンを使って作業をするのだが、今日は葉月とジロウの気配を感じていたかった。

「蒼真さーん、洗剤は?」

「洗面台の下」

「蒼真さーん、洗濯バサミは?」

「そんなのない」

「えーっ、おかしいでしょ」

顔をしかめる葉月は、万事がこんな感じで、案外、騒がしい。

蒼真は、洗濯したらマンションの下のコインランドリーに行って、ドラムに投げ込んで乾かすのが常だ。

「うーん、、、」

「どうした?」

「蒼真さん、洗濯物干しが欲しいです。下着とか干したいし」

下着と聞いて蒼真が赤くなった。

「コ、コインランドリーがあるけど?」

「しょっちゅう乾燥機にかけてたら下着が傷むんです」

「ごめん」

謝らないでください、と葉月が苦笑した。

「ジロウにミルクをやったら、そこのショッピングセンターに行きませんか?短時間の外出なら大丈夫だと思うし、買いたいものもあるんです。あっ、もちろん洗濯物干しは自分で買いますよ。引っ越しが決まったら購入したものはここから運び出しますし」

まだ一緒に暮らし始めたばかりなのに、ここから出ていく話をする葉月。

「心配しなくていい。この家に足りないと思うものがあれば買ってくれ。俺じゃわからないから」

悲しそうな蒼真の顔をみて、キュンと、葉月の萌えスイッチが入る。

「蒼真さん、困ったことがあったら何でも相談してくださいね?」

そのスイッチの存在を知らない蒼真は、突然、上目遣いに蒼真の顔を覗き込んでくる葉月にドキドキしながら、

「あ、ああ」

と、頷いた。
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