僕に君の愛のカケラをください
「カップラーメンですか?」

「ああ、6歳までに食べさせて貰えたのはカップラーメンか食パンだけだった」

蒼真は、グラタンを口に運びながらボソボソと話し始めた。


蒼真は幼い頃、母親と二人暮らしをしていた。

物心ついた頃には一人で留守番させられていて、家から出たいと言うと怒られた。

食事は1食。カップラーメンか食パン。

母親はほとんど家におらず、夜遅くに帰ってきては、蒼真に背を向けて眠ってしまう。

話しかけても無視される。

テレビは見てもいいと言われていたため、一日中テレビを見て過ごしていた。

幼い頃はそれが当たり前の生活だと思っていた。

6歳の秋、二人の大人が蒼真の住むアパートにやって来た。

蒼真の小学校入学の案内を出したが、返事がないのを児童福祉の担当者がおかしいと思い、蒼真のアパートを訪ねてきたと言う。

児童福祉員は大家に事情を説明して鍵を開けてもらった。そこには、テレビの前で膝を抱える小さな少年。

標準体重よりも随分小さくて痩せ細った体。

落ち窪んだ覇気のない目。

"ネグレクト"だった。

それは"無視すること、ないがしろにすること"を意味する。

児童相談員は母親に面談を申し出たが、蒼真の母方の祖父の住所を告げると跡形もなく姿を消した。

蒼真の祖父は、児童相談員の話を聞いて蒼真を引き取ってくれた。

しかし、実際は祖父とは別棟の離れに一人置かれ、お手伝いさんが食事と掃除、洗濯の面倒をみてくれた。

お手伝いさんはいい人だったが口下手で必要最低限の仕事しかしない。

蒼真はいつも一人だった。

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