僕に君の愛のカケラをください
「葉月、どこに行って何をしてた?」

帰社した葉月は、早速、蒼真に見つかって萎縮した。

「警備員から荷台を借りて走り去ったそうだが?」

腕を組んで、葉月のデスクの前に立つ蒼真は、今流行りの塩顔イケメンだ。

背も高く、来年30歳になるとは思えないほど若々しくてサッパリとした顔つきは他社の女性からかなりモテる。

一方で、顔に似合わずかなりの硬派であることも有名。当然、社内の女性スタッフは恋愛対象外認定だと先輩から聞いている。

葉月は、何を考えているかわかりにくい蒼真に対して、男としての興味はない。

時折見せる寂し気な表情は気になるし、時々妙に萌えスイッチを押してくるところはポイントが高いと思ってはいたが、、、。

「蒼真さん、ちょっとプライベートなことなので詳細は言えません。ついでと言ってはなんですが、これから5日間はフレックスタイムにしてもいいですか?」

全く回答にならない返事をする葉月にイライラした様子の蒼真は、

「理由によるな」

とお茶を濁して返した。

「命がかかっているんです」

涙目で見上げてくる葉月はかなり色っぽい。
肩までの柔らかいウエーブヘアに大きな目。
色白でピンクの唇は誘っているように見える。

しかし、中身はかなり男気があってサバサバしているため男子受けはあまり良くない、と本人が歓迎会の時に語っていた。

「身内が悪いのか?」

「、、、そんな感じです」

目を反らした葉月に疑念を持ちながらも、蒼真は頷いた。

「わかった。困ったことがあったら相談しろよ。葉月」

そう言って離れていく蒼真を見て、葉月は安堵のため息をついていた。



< 5 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop