僕に君の愛のカケラをください
葉月の父親
翌日曜日。葉月は父親に電話をしていた。

「お父さん?今、生後4日目の子犬を育てていてマンションを離れているの。,,,えっ、そうそう、だから知り合いの家に居候させてもらってる」

台所から葉月の話している声が聞こえてくる。

"知り合いか,,,"

葉月の会話に聞き耳をたてていた蒼真は、その言葉に苦笑した。

葉月は父子家庭と言っていた。兄弟の話は聞いたことがないから一人っ子だろうか。

言わば自分と同じ境遇の葉月だが、性格は明るい。いい父親に恵まれたのだろうと推測できる。

もしも、もしもだ。

葉月と結婚するとしたら、父親の許可は必須だ。葉月は蒼真の過去を気にしてはいないようだが、父親はどうだろう。

大事な娘を、ネグレクトされて育ったような男に任せるだろうか?

大型動物の獣医をしていると言っていた。気に入られるにはどうしたらいいのか,,,。

「えっ?今からこっちに出てくるの?子犬が見たい?,,,っ、ちょと待って」

葉月は、戸惑った顔をしながら、携帯を保留にしたまま蒼真に近づいてきた。

「父が、その、今からここにジロウを見に来たいって行っているんですが,,,」

「お、俺は構わないよ。それとも、俺はその間、外に出て時間潰しておこうか?」

一時的とはいえ、男と暮らしているのがバレては困るのではないかという配慮もあったが、蒼真は突然の葉月の父親との対面に内心ビクついていた。

「いえ、家主を追い出すわけにはいきません。蒼真さんさえ良ければ短時間だけここに寄ってもらうことにします」

結局、葉月の父親は昼食がてら、蒼真のマンションに来ることになった。


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