僕に君の愛のカケラをください
「じゃあまたな。そのうち、蒼真くんも家か大学校に遊びに来るといい」

昼食を食べ終えた利信は、蒼真と葉月にそう告げると玄関に向かった。

この後、この近くの大学の獣医学科に用事があるらしい。

「美智子さんにもよろしく」

「ああ」

利信は恥ずかしそうに頭を掻きながら出ていった。

「美智子さんって?」

「お父さんの奥さん」

葉月は、リビングを片付けながら笑顔で言った。

「再婚したのか?」

「はい。私が専門学校を卒業したときに。獣医さんで、父と同じ農業大学校の同僚です」

蒼真はなんと言ってよいか分からず、手持ち無沙汰に片付けを手伝うことにした。

「二人が私に遠慮して結婚しなかったの知ってたから、私は卒業と同時に家を出たんです」

"小さい頃から可愛がってもらっていた"

という葉月は、特にその事を辛いこととは思っていないようだ。

「俺は父親の顔も知らない。母親の顔も覚えてないな」

「会いたいですか?」

葉月の問いに蒼真は首を振る。

「今は、俺を必要だといってくれる人がいるから」

葉月は微笑んで頷いた。



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