僕に君の愛のカケラをください
「葉月ちゃん、今日はマンションまで送らせて」

夕方に持ち込まれた案件のせいで、葉月は残業を余儀なくされていた。

蒼真のマンションまで送られるのは非常にまずい。

"でも荷物を取りに帰ると考えれば、一旦自分のマンションに送ってもらってもいいかな,,,。だけど徒歩で20分足らずとはいえ夜はまだ寒いし、ジロウに負担をかけるかも"

「ふふ、ジロウのこと考えてるんでしょ?大丈夫。僕、車できてるから」

「えっ?本当ですか?じゃあ、お願いしようかな?」

一晩くらいなら自分のマンションで過ごしても大家さんや他の住民には見つからないかもしれない。

ジロウは、ほとんど鳴くことのないお利口さんだし。

蒼真の家で過ごすことが苦痛な訳ではない。

ただ、荷物や着替え、冷蔵庫に残された食べ物のことが気になるというのも本音だ。

蒼真は夕方に取引先に行ってから直帰の予定だ。

取引先から接待を受けることになっていて夕食は食べてくると言っていたので、蒼真の分の夕食は必要ない。

「ありがとうございます。それではお言葉に甘えてもいいですか?」

"後で蒼真にはメッセージアプリで連絡しよう"

金曜の夜からずっと、2~3時間毎に携帯のアラームが鳴って蒼真もその度に目を覚ましていた。

たまには蒼真も一人になってぐっすり眠りたいに違いない。

葉月は、大亮の申し出を受け入れて一旦、自分のマンションに帰宅することにした。

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