僕に君の愛のカケラをください
「ここでいいです。送っていただきありがとうございました」

大亮の車が葉月のマンションの駐車場に着いた。

葉月は、肩にはリュック、左手首にはハンバーガーの袋をぶら下げて、両手でジロウのゲージを抱えて車を降りた。

「玄関まで運ぶよ」

「いえ、大丈夫です。男連れだ、と注目されて、あげくにゲージの中身に気づかれると困るので、このまま一気に部屋に駆け込みます」

真剣にガッツポーズをする葉月を見て大亮が笑った。

葉月の部屋は三階の真ん中。エレベーターがあるので階段を使う人はほとんどいない。

そっちを使えば誰かに会う可能性も低い。

空手部だった葉月は、細くて華奢に見えるが、自称体力バカでもある。

「じゃあ、玄関に入るまで見てるよ」

「ありがとうございます。おやすみなさい」

葉月は笑顔でお辞儀をすると、一目散にマンションに向かって駆け出した。

無事に三階の自宅の玄関前にたどり着く。

葉月は、一旦鍵を開け、床にゲージとハンバーガーの袋を置くと再度、玄関の外に出る。

共同廊下から駐車場を見下ろすと、車から三階を見上げていた大亮に両腕で大きな◯を書く。

そうして、誰にも会わなかったことを知らせると、さよならと手を振った。

安心したように手を振り返した大亮は、再び車のエンジンをかけ走り去った。

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