僕に君の愛のカケラをください
「嬉しい?迷惑じゃなくて?」

蒼真はようやく顔をあげて葉月の顔を見つめた。

その顔は、ほんのり赤く口角も上がって本当に嬉しそうだった。

「えっと、私と大亮さんは似てるんですよね」

突然の脈絡のない発言に、蒼真は驚いたが、言葉を遮らずに最後まで聞くことにした。

「好きになった子は甘やかしたいって言ってました」

ジロウの世話の手伝いをしたり、紅茶を差し入れしたり、自宅まで送ったり、、、。

それは暗に、葉月のことが好きって言っているようなものではないか?

「告白、、、されたのか」

「違います。ポイントはそこじゃなくて」

完全にスルーされている大亮が少し可哀想になってきたが、それこそ蒼真にとってはポイントはそこではない。

「私も、、、」

そこまで言って葉月が言葉を止めた。

"大亮が好きだ"と言うのだろうか。蒼真は居たたまれなくなって両手の拳をギュッと握った。

これでは母親に嫌われるのを恐れて何も言えない子供と一緒だ。

"俺は何も成長していない。こんなんじゃ大亮に葉月を取られても文句は言えるはずがない"

蒼真の中には、幼い頃にネグレクトされた傷が根深く残っており、このような場面では往々にして自己否定の感情が心を支配するのだ。

そして過去何度も、期待をしては裏切られ、蒼真の元から去っていく人達を何人も見てきた。

蒼真が素直になることを怖がるのにもちゃんと理由があるのだか、それを理解してくれるのは、親友の靖晃以外にはいなかったのだ。

そんな蒼真を見て、葉月は優しく頭を撫でた。

「私も、好きな子は甘やかされるより甘やかしたいんです。甘やかされるキャラではないんです、私。天然とか言われるけど本当は違いますよ、蒼真さん、呆れますか?」

葉月の言葉で、蒼真の心に血が通い始め、暖かさが戻ってくる。

「いや、十分天然だと思うが、、、」

「ふふ、天然が蒼真さんのマンションに図々しく転がり込んだりしますか?私も反省してるから今日は自宅に帰ったんですよ」

葉月の言葉に蒼真も笑みをこぼす。

「甘やかしたいって、大亮のことか?」

「そんな訳ないでしょう。話聞いてました?蒼真さん」

葉月がプウッとふくれる。

「寂しがり屋で、甘えん坊で、口下手な、体が大きな、塩顔イケメンさんですよ」

葉月は、ギュッと隣に座る蒼真の大きな体を抱き締めた。


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