僕に君の愛のカケラをください
それからも、ことある毎に葉月は蒼真の仕事量を評価しては、仕事量が多そうな時は手伝ったり、さりげなく周囲に仕事を回したりして気を配った。

そうしているうちに、蒼真も段々と要領を覚えたのか、仕事を抱え込むことが少なくなった。

葉月は、蒼真だけではなく、他のスタッフにも気を配り、仕事量の調整を蒼真に進言することで、周囲の反感を買わないように努めた。

葉月と関わることが必然的に増えてきた蒼真は、戸惑いながらも、葉月に声をかけたり気を遣ったりするような様子が見え始めた。

「葉月、これやる」

出先でもらったお菓子やお土産をくれたり、時にはお昼を奢ってくれたり。

「蒼真さん、そんなに気を遣ってくれなくも大丈夫ですよ。私は自称、体力バカですから」

蒼真は、葉月を甘やかすというよりも、気を遣っているという表現が正しいというくらい遠慮がちだった。

口数が少ないので何を考えているか分かりにくいが、本質は優しく、照れ屋で甘えベタに違いない。

男性として好意を寄せていたわけではなかったが、葉月はどうしてもそんな蒼真を放っておくことができず、職場では何かと世話を焼くようになっていった。

そして、ジロウの件で同居することになってからは、もう、自分が蒼真に惹かれていることは誤魔化しようがない状態になった。

"ここまで自分を求めてくれる存在はいない"

蒼真の悲しげな瞳に宿る壮絶な過去を知ってからは、健気に生きようと努力している蒼真が益々愛しいと思った。

葉月は、目の前で自分のキスを受けて微笑む蒼真を幸せにしたいと心から思った。

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