僕に君の愛のカケラをください
「葉月」

蒼真の唇が葉月の首筋を掠める。

「ちょ、ちょっと待ってください」

うっとりと葉月の首筋に唇を寄せていた蒼真は、まさかの"待った"をかけられるとは思わず、恨めしげな顔を見せた。

「ジ、ジロウにミルクをあげないと,,,。生後6日のジロウには死活問題なんですから!」

ゲージの中で、小さくクゥンクゥンと鳴き声をあげているジロウは気が利かない。

いや、気を利かせるほどの日齢には至っていないのだが、そう思うほど、蒼真の理性は振り切っていた。

「俺がミルクをやるから、葉月は夕飯を食べて風呂に入って来いよ」

「いいんですか?ジロウが蒼真さんからミルクを飲んでくれるようになって、随分自由な時間が増えるなー」

そう言って色気よりも食い気の葉月は、残っていたチーズハンバーガーを口にし始めた。

蒼真は笑いながらジロウの冷めてしまったミルクを作り直す。

「そういや、俺のせいでミルクが遅れたんだもんな。悪かったよジロウ」

チーズハンバーガーを食べ終えた葉月は、愛しそうにジロウを見つめてミルク与える蒼真を見ながら、浴室に移動する。

蒼真の本音が聞けた。

"大亮さんに感謝だけど、今後は対応を気を付けなきゃ"

葉月は天然ではない。大亮の気持ちはなんとなくわかっているが、なんとなく仄めかされている状態だから厄介だ。

"明日考えよう"

能天気な葉月は、お風呂に入ることを優先して考えるのを先伸ばしにした。
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