僕に君の愛のカケラをください
蒼真と葉月はその朝、一緒に出勤した。

大亮だけでなく、他のスタッフにも変な誤解を与えたくないと話し合った結果だ。

朝の送迎を打診してきた大亮に、葉月が送ったメッセージは、

"今朝は蒼真さんと出勤します。その理由は後でお話しますね"

という内容。

K&Sのフロアのデスクに荷物を置いた葉月と蒼真は、会議室に靖晃と大亮を呼び出し、同居に至った経過と、昨日から付き合い始めたことを伝えた。

「何だ。意外と早くくっついたな。靖晃、俺は見事に当て馬の役をやってのけたぞ」

「さすが、大亮。グッジョブ!」

靖晃と大亮はパンっと右手を重ね合わせた。

大亮と靖晃の満足気な言葉を聞いて、蒼真はポカンとしていたが、葉月は納得したように顎に手を当てて

「なるほど、そういうことでしたか」

と頷いていた。

「靖晃さんの差し金だったんですね」

「おかしいと思ってたんですよ。この間まで私のこと何とも思ってなかった感じだったのに、急に接近してくるから、何かあるなって思ってました」

大亮はクスッと笑い、

「いや、葉月ちゃんのことを可愛いと思ってるのは本当だよ。でも蒼真が焦れったくて、靖晃と話して少しはっぱをかけてやろうかと,,,」

と言った。

そこではじめて、蒼真は靖晃と大亮が自分のために一芝居打ったのだと気づいた。

「全く、こんなややこしい男じゃなくて、俺にしとけば?葉月ちゃん」

「お兄ちゃんキャラよりも弟キャラにしか萌えません」

蒼真以外は声を出して笑っている。

靖晃以外にも、蒼真のことをこんなにも思いやってくれる友人が身近にいたのだと、蒼真は改めて実感して胸が熱くなった。

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