僕に君の愛のカケラをください
「さて、僕が言いたいことはこれだけです」

八代は姿勢を正して言った。

「お母さんの鈴さんがこの写真を大切に持っていたこと、孝之助さんとは連絡を取っていて、節目ごとに蒼真さんの成長ぶりを確認していたこと、その二つは知っておいてほしい」

蒼真は、葉月に繋がれた手をギュッと握った。

「もう、ほとんど鈴さんは意識がない。会うか会わないかは蒼真くんの自由です」

葉月は、蒼真の手を掴んで立ち上がった。

「行こう。蒼真」

これで生きている母に会えるのは最後かもしれない。

しかし、この23年間、母に対して会いたいという、プラスの感情ばかりだったわけではない。

恨んだり、罵ったりそんな負の感情だって持ち続けてきたのだ。

「いいんだよ。どんな気持ちも本当の思いだ」

八代が蒼真の肩を叩く。

蒼真は顔をあげて歩き出した。
< 88 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop