ONE〜想いは一つ〜
「だ、だから…おま…」
「南條だろ?何、顔真っ赤にしてんだよ」
両腕を掴まれ逃げ場のない私を、見下ろし間を詰めてくる中元先生に、精一杯の強がりを言ってみた。
「せ、先生!人が来たらどうするんですかっ!こ、ここ職場ですよ!」
「あぁ?職場じゃなかったらいいのか?な、南條…俺さ…」
二人の間を電話の音が引き裂いた、
すぐに電話に出た中元先生は、受け入れを了承した。
「っ、続きはまた今度な…ストレッチャー用意しろ」
「はい!」
何もなかったように、中元先生は私に指示を出した。
電話の音を聞きつけた谷岡先生や、ナースが集まってきた。
中元先生は、何もなかったように、急患を受け入れる準備を始めた。
「南條、谷岡と変わって、そのまま心マ続けろ!」
「はいっ…!」
まもなく、急患で運ばれてきた患者に、心臓マッサージを続けろと言われ、谷岡先生と入れ替わった。状況は緊迫を要していた。
誰もが見て、危険な状態だと感じ取っていた。
「南條降りろ、ショックを与える」
「はい」
緊迫した処置室に響く、中元先生の声。
離れろ!と一旦、患者から離れた。
そして与えられた電気。
患者の体が電気で揺れた。
それでも波形は動かない。
レベルを上げて再度、ショックを与えた。
ピッ…ピッ…
皆んなが、モニターに映し出された波形に安堵した。
患者は助かった。
迅速な中元、谷岡先生の処置で。
私はそんな中元先生の横顔を見ながら、自分の心臓が激しく音を立てているのが分かった。
どうして?こんなにドキドキが止まらないの?
こんな横暴王子なのに…。