ONE〜想いは一つ〜
「ほんとか?」
「ほんとです。ほんと…です」
ブンブンと首を縦に振った。
「ち、父が医師なんです…だから…もしかしたら無意識に指標レベルの事使ったかも…し、しれません」
握る力が一瞬緩まった。
私はその隙に腕を引いた。
「え、お、お父さん?お前の?」
いや…だから、お前って先生…
「は、はい。私の父は、南條総合病院の院長です。子供の頃から、父の医学書を見るのが好きで見ていたんで、もしかしたら…」
嘘ではなかった。
子供の頃から、父の書斎に入っては医学書をみていた。意味も分からずページをめくっていた記憶はある。
興味を持ち始めてからは、受験勉強の傍ら、医学書も読んでいた私。
「そ、そうか…南條総合病院か…」
それだけ言うと中元先生は、邪魔したなと席を立って帰って行った。
「な、なんだったの…」
指標レベルの話を持ち出され、バレたかと思ったその時、父の…南條総合病院の話を聞いた途端に中元先生は黙り込んでしまって、帰ってしまった。
ごまかせたのなら、それはそれでよかったかもしれない。
…と思っていた。